文字起こしは面白い。ライターさんの気持ちになって

2020/09/16

文字起こしは面白い

文字起こしをしていると面白くて、ついついのめり込んでしまうことがあります。話者の語る口調が熱気を帯び、まるでその場に自分が居合わせているかのように思え、話の中に引き込まれてしまうのです。

文字起こしは、実に面白い仕事です。自ら足を運ばずとも、実に多くの多種多様な人たちの見識にじかに触れることができるのです。これは文字起こしを生業とする人間の特権です。インタビューされる人たちは、注目され取材されるだけあって見識の高い人たちが多いようです。それに触れることができることは、この仕事の最大の魅力です。

しかし、のめり込めばのめり込むほど、悩ましいことがあります。音源を渡され依頼どおり単に「けば取り」だけを施せばよいのですが、どうしても残しておきたい「けば」などがあります。これを削除すると、何となく意味は通じても臨場感から伝わるであろう話者の微妙な心境や本意は伝わらないかもしれません。話者が本心で言っているのか、皮肉を込めて言っているのか、自虐的な発言なのか、にじみ出る人柄さえも見えなくなります。これらは、その場にいた取材者にしか分からない部分です。他に分かる人間がいるとしたら、紛(まぎ)れもなく文字起こしをする人間だと思います。

音源は、その場の雰囲気、人の息づかい、感情など様々な要素が含まれ、臨場感あふれるものですが、さすがに話者の表情までは分かりません。ですから、想像力をフルに発揮して音源に聞き入っています。

けば取りを施した後、整文を依頼されることがあります。そのときの最大の悩みは、話し言葉と書き言葉との差異です。多くは、ですます調に統一するようにしますが、度を超すと臨場感がなくなり、意味が伝わりにくくなったり、話者の人柄が伝わらなかったりします。

話し言葉と書き言葉をうまく調和させることや、けばを取り過ぎないこと、場合によっては方言を残すなど悩みながら調整していきます。このように、お預かりした取材音源の気になった箇所を何度も何度も、しつこいほど聞き直し、腑(ふ)に落ちたところで文字に起こすようにしています。その効率の悪さの代償として、仕上がりまでの時間が同業者のみなさんより、多く掛かってしまうのは否めないところです。

いずれにしても、取材者やライターさんの気持ちになって、この面白い文字起こしの仕事を遂行したいと思っています。